奈緒の水筒 03
水の感触で目が覚める。
余りの出来事に疲れ果てた奈緒が起きると、全身が水浸しだった。
いや、正確には汗まみれになっていた。
水の感触で目が覚める。
余りの出来事に疲れ果てた奈緒が起きると、全身が水浸しだった。
いや、正確には汗まみれになっていた。
瓦礫に埋もれた部屋はいつの間にかサウナのような温室になっていた。
どこからか出火したのだろう。その火はこの部室棟にも回ってきたらしい。
額に張り付く前髪を払い、奈緒は改めて出口を探す。
どこを押しても引いても瓦礫は動かない。
叫び声を上げても誰も気づいてくれない。
奈緒は声を枯らすまで、悲痛な叫びを上げた。
ある瞬間、奈緒は目眩とともにその場に座り込んだ。
全身から噴き出る汗はシャツを濡らし、全身からは湯気が出るほどになっている。
喉は既にカラカラで、気分も悪かった。
脱水症状。これ以上は危険だと体が告げていた。
へたり込んだ奈緒の指先が、ある物を捉えた。
それはさっき自分が用を足した水筒。
もちろん中身はおしっこ。
しかし奈緒はそれをつかみ取ると、ふたを開けた。
フタの中へ静かにおしっこを流し込む。
とたん、独特のアンモニア臭が顔の前へと立ち上った。
余りのニオイに奈緒は顔を背ける。しかし、本能はそれを手放そうとはしなかった。
迷っている場合じゃない。そう体は告げている。
そして、奈緒は自分のおしっこがなみなみと注がれたそのコップにそっと口をつけた。
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